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「いるのはわかっている。姿を現したらどうだ?」
彼が剣の切っ先を僕に向ける。
間違いない。彼は僕の位置までわかっている。
このまま逃げようかとも思ったけど、彼からは逃げ切れないだろう。
僕は大人しく魔法を解いた。
「ほぉ、まさかリーダーだったとは」
言葉ではそう言いつつも、彼の表情に驚きはあまり見られない。
くそっ、やるしかないか。
右手に黒龍を召喚し、構える。
「その刀は……!」
「1つ訊きたい」
僕らの声が重なった。
何故驚いてるのか不思議に思いつつ、僕は言葉を続ける。
「どうして僕がいることに気付いた?」
彼はしばらく沈黙するが、やがて仮面越しに僕の顔を見て口を開く。
「気配だ。姿は見えなくとも気配で大体の位置はわかる」
気配か……。確かにこの魔法は闇属性の【シャドウベール】と違って気配までは消せない。
それでも息を潜めて気配を殺してたんだけどな……。
「俺も訊きたいことがある」
すると、彼がやけに真剣な表情で声を掛けてくる。
戦う前だからだと思ったけれど、次の彼の言葉に驚きを隠せなかった。
「……クラッドだな?」
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