43148人が本棚に入れています
本棚に追加
◆ ◆ ◆ ◆
頭が真っ白になって、何を言われたのかわからなかった。
しかしそれも一瞬のことで、徐々に思考が働き始める。
――クラッドだな?
目の前の彼は確かにそう言った。
彼は……僕を知っている……?
構えていた黒龍もいつの間にか下ろされ、自然と口が開く。
「僕を知ってるんだね!? 教えてくれないか? 僕は何者なんだ?」
ドクンと心臓が高鳴る。
やっと見つけた、記憶の手掛かり。
けれど、興奮する僕とは対照的に、彼は悲しそうに唇を噛むと、冷たい視線を僕に向けてきた。
「言えば、思い出すのか?」
その言葉がやけに耳に響いた。
あんなにうるさかった鼓動も、まるで止まってしまったかのように静かになる。
「俺の……俺達のことをこうも簡単に忘れたお前が、言えば全てを思い出せるのか?」
返事をすることができなかった。
何も言わない僕を見て、彼は言葉を続ける。
「覚えていないだろうが、お前は最後にこう言った。戦いの中に戻る、と」
彼は一度ゆっくりと息を吐き出すと、握っていた剣を構えた。
「構えろ、クラッド! ならばその戦いの中で、俺が全てを思い出させてやる!」
最初のコメントを投稿しよう!