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言うが早いか、彼は僕の視界から姿を消した。
一瞬後、背後に人の気配。
反射的に黒龍を背中に回すと、硬質音と共に腕に重みが加わる。
無理な体勢では長くは保たないため、すぐに反転して振り向き、黒刀を振り払った。
彼は後ろに跳び退いて距離をとると、人差し指を僕に向ける。
「【ダークネスレイ】」
指先から放たれる黒い閃光。
それはかなりの速さで真っ直ぐ僕に迫るが、僕も彼が魔法を使った時には同じ構えをしていた。
「【ダークネスレイ】」
わずかに遅れて、指先から彼とまったく同じ閃光が走る。
激突する2つの閃光。発動したのが遅かったため、中間よりも僕寄りだ。
けれどそれも一瞬のこと。彼の閃光は相殺されることなく僕の閃光を貫いた。
「っ!」
咄嗟に魔法を止め、横に転がって閃光を避ける。
――危なかった……。
相殺するつもりだったのに……。魔力が足りなかったか。
呼吸を整えて再び彼に視線を向ける。
しかし改めて見た彼は、とても冷めた目で僕を見ていた。
「……何だ今のは。何故もっと魔力を込めなかった。お前の戦い方はそんなものではないだろう」
ズキリと、頭に痛みが走った。
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