交流試合開始

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さらに、 「【サイクロン】」 彼の周囲に巻き起こった風が激しく渦巻き、その姿を竜巻の中へと覆い隠す。 風が彼と槍を宙に浮かし、四方八方から不規則に槍が飛んでくる。そんな状況を作り出したわけだ。 ――さぁ、どうする? 時折、土の槍が内側ではなく外側に飛んでくることもあったが、それでも十分ダメージを与えられたと思う。 頃合いを見て魔法を解除。 その時僕の目に飛び込んできたのは、彼が黒い膜に覆われて身を守っていた光景だった。 「相変わらず厄介な魔法を使ってくれる……」 と、膜を消しながら着地した彼がボソッと呟く。 あー、うん。そうか。あの数を防ぎ切ったか、うん。そういえば、今日の夕食は何だろう。 「……遠い目をしてるぞ?」 「誰のせいだ!」 自分のことを棚に上げて……という彼の呟きをスルーし、逃避をやめて現実に向き合う。 今ので確信した。彼には眼の力とやらがない。 彼が放つ以上の魔法を使用したにもかかわらず実践してくれなかったんだ。もしかしたら使用条件があるのかもしれないが、その線は薄いと考えて間違いないだろう。 だけど彼自身の能力はとんでもなく高い。僕がここにいれるのも彼が手加減してるからだ。 彼が本気を出せば、僕なんかは簡単にこの試合から排除させられるだろう。 それが意味するのはつまり、僕達の敗北。 記憶の手掛かりなのは惜しいけど、決着をつけるのなら今しかない。 そう考えた時だった。 「誰か来てくれー!」 「誰か来て~!」 「誰か来てよー!」  
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