交流試合開始

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親指で鍔を少し押し上げ、右手は柄に添える。 右腕全体に魔力を流して強化すれば準備は完了だ。 黒龍居合い 斬影。 この構えを目にした彼は何故か口元を緩めた。 「そういうところは変わらないな……」 言うや、彼は笑みを消して、剣を上段に構える。 「いいだろう。ならば俺も敵としてお前を倒す!」 互いの視線がぶつかる。数メートルの距離があるが、魔力を走らせた運動能力ならば一瞬で埋まる距離だ。 しかし僕も彼も動かない。 一撃で片を付ける。僕はもちろん、恐らく彼もそう考えているからだ。 空気が固まったように張り詰める。 不意に、森のどこかで爆発音が響いた。 その瞬間、僕の身体は前へ飛び出した。 彼は上段に構えたまま動かない。その間に開いていた距離が一瞬で埋まる。 息が届く距離まで迫った僕らはそれぞれ剣と刀を振るった。 僕は神速に劣らない速さで抜刀。彼はタイミングを読んで剣を振り下ろす。 だが、 ――遅いっ! それぞれの刃を振り抜いた僕らは、お互いの位置を逆転させた。 痛みはない。そして、手応えはあった。 「……ぐっ」 僕の背後で、彼が呻いた。  
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