交流試合開始

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だけど、何だろう? 何かがおかしい。 言いようのない違和感が僕を襲う。 首を回して彼を見ると、こちらに背を向けた状態で膝を付いていた。 違和感が一層強くなる。 どうして彼はわざわざ待ち受けることを選択したんだろうか。的になることはわかりきっていたはずなのに。 そもそも彼はこんなに弱かったか? 彼ほどの実力者なら、いくらでも対処法はあったはずだ。 ――まさか……! その瞬間、すぐ近くで木の枝が折れたような音がした。 すぐさま視線を正面に戻した矢先、顔から右脇腹にかけて走る激痛。 何が起きたかわからない僕の目の前に、剣を振り下ろした構えの彼がゆっくりと姿を現した。 ――あぁ……。そういうことか。 邪魔だった仮面が割れ、長いこと外気にさらされていなかった僕の頬が、涼しげに風を受ける。 仮面越しじゃない景色はとても鮮明に感じて、空に映る鮮やかな金がとても綺麗に見えた。 気付けば、無意識のうちに僕の左手は彼女へと伸びていた。 「エレナ……?」  
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