闇の覚醒

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この宿泊施設は3階建てで、僕がいたのは2階だったらしい。 建物の真ん中に設けられた階段を下りてロビーに出ると、数人のクラスメートが各々談笑していた。 僕が下りてきたことに気付くと、みんなの視線がこちらに向けられる。 視線が痛い。罪悪感に呑み込まれる。 できるだけ目を合わせないようにして前へ進み、みんなの前で思い切って頭を下げた。 「ごめん!」 謝って済むとは思ってない。これはケジメ。ただの自己満足。 すぐにこの場から立ち去ろうと頭を上げようとした時だった。 「なに謝ってるんだよ、クラッド」 「そうそう。たかが交流試合だろ」 「確かに悔しいけど、相手が強かったしね」 「私達の実力不足よ。いい経験になったわ」 「オレも負けちまったしな。帰ったら特訓だ」 それは、完全に予想外の言葉だった。 「みんな……」 てっきり責められるとばかり思ってたのに……。 顔を上げて見たみんなの表情は、無理をしてるようには見えなかった。 と、その時、僕の頭は後ろから誰かに掴まれた。 それと共に、いつもの偉そうな声が耳に届く。 「んなこと気にしてたのかよ」 「クロス……」  
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