闇の覚醒

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「別にお前が望んでリーダーを買って出たわけじゃねぇだろ。誰も責めやしねぇよ。それにな、勝負ってのは勝って得るものもあれば負けて得るものもあるんだぜ? 必ずしも損ばかりじゃねぇ」 俺様は負けねぇけどな、と言いながら、クロスは僕の髪を乱暴に掻き乱す。 ……うん。なんか楽になった。 「ありがとう。クロス、みんな」 みんなは笑顔で頷いてくれた。 「でも、カッコいいこと言ってるけど、クロスも勝ってないらしいね」 雰囲気が柔らかくなったところで、クラスメートの1人が意地の悪い笑みを浮かべながらそう口にする。 「そうなの!?」 僕は唖然とした表情でクロスを見た。まさかクロスが勝てなかったなんて……。 「負けてもねぇからな! 決着がつかなかっただけだ。まぁ、あのまま戦ってれば俺様の勝ちだったけどな」 そうは言うものの、さすがに居心地が悪いのか、クロスはわざとらしくゴホンッと咳き込み、話題を変えてきた。 「さっきは誰も責めないって言ったけどな、実際は全員がそう思ってるわけじゃねぇ。一応全員に謝っといた方がいいだろうよ」 「そうだね」 元よりそのつもりだ。例え許してくれなくてもね。 「まぁ、うちの連中にそんな小せぇ器のヤツなんていねぇから大丈夫だろ。お前は気晴らしに街でも見てきたらどうだ?」 クロス達は行かないのかな、と思ったけど、何か理由があるんだろう。 僕は改めてお礼を言い、宿泊施設を後にした。  
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