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気付くと、ある建物の前にいた。
丈夫そうな石垣の塀。それは左右を見ても曲がり角が見えない程真っ直ぐ続いている。
塀には感知できない程に完成された結界魔法。頭痛のせいで敏感になっているのか、何故か僕には感知することができた。
「何でここに来たんだろう……」
僕は目の前の建物……セントレス学園を眺めながら、自分に向けて小さく呟いた。
答えは出ている。ここに記憶の手掛かりがあるんだ。
「よしっ!」
一度目を閉じて意を決し、僕は結界を越えて学園内へと足を踏み入れた。
頭痛は続いているものの、足取りは軽い。迷うことなく動く足に行き先を任せ、僕はただ辺りの景色を見続ける。
――この景色……見たことある!
「そうだ……。確か向こうに寮が――」
呟きは途中で止まる。
僕の視線は、こちらに歩いてくる女性に支配されていた。
鮮やかな金髪から、夢に出てきた彼女かと思ったが、よく見ると違う。
髪はストレートだし、身長も女性にしては高い。何より雰囲気、威圧感が常人のものとは比べものにならない。
――何者だ、この人?
無意識のうちに僕は身構えていた。
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