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やがてその女性は僕の目の前で立ち止まる。
「侵入者はあなたでしたか……。お久しぶりですね」
「え?」
久しぶり? そうか……。この人も僕を知ってるのか。
首を傾げたことで、どうやら僕の状態を察してくれたらしい。
「残念です。用意した舞台も無駄でしたか」
「用意した……舞台……?」
その言葉が頭の中で引っ掛かった。
突然の交流試合。何故か選ばれたのは僕達のクラス。僕のことを知っていた生徒。手を抜いた戦い方。
まさか、あの試合は僕の記憶を戻すためだけに行われた!?
「そこまでする程の人間なんですか、僕は?」
自然と口から言葉が出る。
けれど、目の前の女性の返答は質問の答えなんかじゃなかった。
「エレナさんには会えましたか?」
「っ!」
再び押し寄せてくる激痛。
くそっ、ようやくマシになってきてたのに。
額を押さえる最中、彼女が意地の悪い笑みを浮かべたような気がした。
「今もあなたを待ち続けてますよ? ぐずぐずしててもいいんですか?」
「そ、んなこと、言われても……」
何がしたいんだ、この人?
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