闇の覚醒

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丁度その時、学園内にチャイムの音が鳴り響く。 同時に、彼女の表情がばつの悪いものへと変わったのを見逃さなかった。 「タイミングが悪いですね……」 彼女はチラッと学園の方に視線を向けると、すぐに僕に向き直る。 「早くここを立ち去ってください。他の生徒に見つかると厄介なことになるでしょうから」 「はぁ? 何を言って――」 「早く! 時間は私が稼ぎます」 何を言ってるのかわからなかった。でも、あまりの気迫に、僕は言われた通りその場を立ち去ることしかできなかった。 「次は、クラッド・クロムウェルの時に会いましょう。クラッド・アルシュタート君」 去り際に、そんな言葉を耳にした。 「つっ……」 学園から出た僕は、頭の痛みに、思わず塀に寄り掛かって座り込んだ。 結局何だったんだ、あの人? こんな状態にするだけしといて。 生徒には見えなかったし、やっぱり先生かな。 それよりも……。 「クラッド・クロムウェル、か」 まさかこんな形で自分の名前を知るなんてね。 複雑な気分だ。この痛みがなければ素直に喜べるのに。 「いい加減に治まらないかなぁ……」 「大丈夫?」 そんな時、頭の上から声が降ってきた。  
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