闇の覚醒

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――今度は誰? そんな気持ちで、半ば俯き気味だった顔を上げる。 途端、僕は思わず目を細めた。太陽の光が目に入ったからだ。 それにより、僕に声を掛けた人物の顔は逆光で見えない。 ただ、背格好と声で女性ということはわかった。 「誰ですか?」 とりあえず訊ねてみる。 逆光で見えないことはわかっているはずなのに、その人物は動こうとしない。 その代わり、楽しそうな含み笑いと共に返事が返ってきた。 「ただの一般人よ。今はリン・クレミアって名乗ってるわ」 ――……今は? 気になることはあるけど、どうやら警戒する必要はなさそうだ。 魔力もほとんど感じられないし、本当に一般人なのかな。 「それで、クレミアさんが僕に何の用です?」 もしかしたら僕を心配してくれたとか? さっきも声を掛けてくれたし、その可能性が高いか。 「そうねぇ……。郵便屋さんってとこかしら」 けれど、クレミアさんの答えは僕の予想を大きく外れていた。 「ホントはこんな荒業使いたくないんだけど、そうも言ってられないの。あなた宛ての手紙よ」 差し出されたのは二つ折りにされた白い紙。 僕は慎重にそれを受け取ると、ゆっくりと紙を開いた。  
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