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リオンの紅い眼が私達に向けられる。
「こうなることがわかってたからこそ、秘密裏にアイツの記憶を戻そうとした。そのための交流試合だ。フィアさんと学園長、そして恐らく聖炎の断罪者。Xランク3人がわざわざ仕組んでまで用意してくれた。何が何でも思い出させるつもりだったが……」
「……失敗したのね」
ティナの声がやけに大きく聞こえた。
けれど、リオンは微かに唇の端を上げる。
「確かに失敗したことは認める。だが、あながちそうとも言い切れない」
意味深な言葉に、みんなは首を傾げ、私は俯きかけていた顔を上げた。
「アイツの記憶は着実に戻りつつある。全ての属性が使えることにも気付いていたし、黒龍も召喚していた。それに先程の戦いで技も思い出させた。何よりエレナ、お前は聞いたはずだ。アイツが転移する直前に言った言葉を」
そう。転移する直前、クラッドは私に左手を伸ばしながらこう言った。
エレナ……と。
そして見間違えるはずがない、彼の伸ばした手の薬指に填まっていた指輪。
「あの試合は確実にいい影響を与えている。幸い、今アイツがいるのはシルメシアだ。記憶の手掛かりは腐るほどある。何か思い出すことを期待しよう」
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