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「えっと……どうも、はじめまして」
とりあえず軽く頭を下げる。
「昨日話したでしょ。彼が記憶喪失の子だよ」
僕が戸惑っているのを察してくれたのか、レインがおじさん達に声を掛けてくれた。
「あぁ、キミがか」
するともう1人の門番――角刈り頭のおじさんが僕を興味深そうに眺めてくる。
「う~ん……見覚えがないな。街の人の顔はある程度知ってるんだが……」
――見覚えがない……か。
「そうですか……」
「あっ、いや、俺も全員を知ってるわけじゃないからな。俺が覚えてなかっただけかもしれない」
僕が落ち込んだと思ったんだろう。おじさんは慌ててフォローを付け加える。
それはそれで悲しいけど……。
その時、不意に誰かに服の袖を引っ張られた。
「ねぇねぇ、そろそろ行かないと早く出た意味がないよ」
レナだ。
彼女の両手は僕とレインの制服の袖を握っている。
「そうだったね。おじさん達、開けてもらっていい?」
「おぅ。ちょっと待ってろよ」
そう返事をするや否や、おじさん達2人は門の左右にそれぞれ手を触れた。
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