ローレンツ学園

13/39

43147人が本棚に入れています
本棚に追加
/395ページ
すぐに答えることができなかった。 この学園に来たのはレナ達に言われたからだし、承諾した理由は失った記憶の糸口が見つかるかもしれないから。 決して勉強するためだとか、友達をつくろうなんて考えはなかった。 でも、学園に通うレナ達を見て羨ましく思った自分もいる。 記憶のない僕にとって、学園は行ったことのない場所と同じようなものだから……。 だからこそ。 「はい」 僕は強く、大きく頷いた。 僕もみんなと同じことがしたい! ――……あれ? この気持ちは前にどこかで……。 「その気持ちがあるのならワシは喜んでキミを迎え入れよう」 ふと学園長に視線を戻せば、彼は優しい笑みを浮かべながらシワシワの細い手を差し出す。 「改めて、ようこそ、ローレンツ学園へ」 差し出された手を見つめる。 この手を取るか取らないかで、これからの人生が大きく変わるだろう。 だが僕の気持ちは変わらない。 「よろしくお願いします」 迷うことなく、その手を取った。  
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43147人が本棚に入れています
本棚に追加