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すぐに答えることができなかった。
この学園に来たのはレナ達に言われたからだし、承諾した理由は失った記憶の糸口が見つかるかもしれないから。
決して勉強するためだとか、友達をつくろうなんて考えはなかった。
でも、学園に通うレナ達を見て羨ましく思った自分もいる。
記憶のない僕にとって、学園は行ったことのない場所と同じようなものだから……。
だからこそ。
「はい」
僕は強く、大きく頷いた。
僕もみんなと同じことがしたい!
――……あれ? この気持ちは前にどこかで……。
「その気持ちがあるのならワシは喜んでキミを迎え入れよう」
ふと学園長に視線を戻せば、彼は優しい笑みを浮かべながらシワシワの細い手を差し出す。
「改めて、ようこそ、ローレンツ学園へ」
差し出された手を見つめる。
この手を取るか取らないかで、これからの人生が大きく変わるだろう。
だが僕の気持ちは変わらない。
「よろしくお願いします」
迷うことなく、その手を取った。
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