ローレンツ学園

33/39

43147人が本棚に入れています
本棚に追加
/395ページ
「わからないって顔だな」 僕は応えず、ただクロスを見つめる。 「どうやら銃は効かねぇようだし、何より丸腰のヤツに本気は出したくねぇからな。お前と同じ土俵でやり合おうと思ったのさ」 そう言ったクロスは僕に左手を向け、ゆっくり、しかしはっきりと言葉を発した。 「【ダークヴァン】」 「っ!」 刹那、周囲の空間が一瞬歪み、そこから黒い炎が勢いよく燃え上がる。 その炎を目にした途端、再び考えるより先に身体が動いた。 「【フィールツイスター】」 ドーム状に竜巻の壁が広がり、身体に触れる寸前で黒炎を吹き消す。 ――ダークヴァン……。黒炎に触れた者を術者が魔法を解くまで燃やし続ける厄介な魔法……。 危なかった。もう少し遅ければ触れてた……。 竜巻の壁の中で冷や汗を流す僕。 そして、 ――まただ。また身体が動いた……。 自分の身体に視線を落とす。 学園長は、記憶が無くても身体は覚えているものだと言っていた。 なら今のは……。  
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43147人が本棚に入れています
本棚に追加