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「わからないって顔だな」
僕は応えず、ただクロスを見つめる。
「どうやら銃は効かねぇようだし、何より丸腰のヤツに本気は出したくねぇからな。お前と同じ土俵でやり合おうと思ったのさ」
そう言ったクロスは僕に左手を向け、ゆっくり、しかしはっきりと言葉を発した。
「【ダークヴァン】」
「っ!」
刹那、周囲の空間が一瞬歪み、そこから黒い炎が勢いよく燃え上がる。
その炎を目にした途端、再び考えるより先に身体が動いた。
「【フィールツイスター】」
ドーム状に竜巻の壁が広がり、身体に触れる寸前で黒炎を吹き消す。
――ダークヴァン……。黒炎に触れた者を術者が魔法を解くまで燃やし続ける厄介な魔法……。
危なかった。もう少し遅ければ触れてた……。
竜巻の壁の中で冷や汗を流す僕。
そして、
――まただ。また身体が動いた……。
自分の身体に視線を落とす。
学園長は、記憶が無くても身体は覚えているものだと言っていた。
なら今のは……。
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