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だが、クロスは足を伸ばして急停止。ここぞとばかりに僕の方に方向転換し、あっという間に距離を詰められた。
「っ!」
初撃の左アッパーを、上体を後ろに反らして躱す。
反撃に出ようとすると、クロスは振り抜いた左腕を曲げ、肘を振り下ろしてきた。
それを頭上で腕を重ねて受け止める。
と同時に、腕に響く痺れ。
思わず顔をしかめると、今度は空いていた右手が顔面に。
上げていた腕を下ろし、構えはそのままで来るべき打撃に備える。
だけど腕には何の衝撃も来ない。
代わりに、腹部に強烈な拳が突き刺さった。
「うぐっ!」
――フェ、フェイント……!?
クロスの攻撃はそれだけでは終わらず、両手を使って何発も僕の胴体を殴る。
そしてトドメとでも言うような回し蹴り。
その威力は凄まじく、今度は僕が壁に叩き付けられた。
「……うぅ……」
痛い、と思った瞬間にはすでに魔法陣が発動され、痛みと制服の汚れが消えていく。
しかし、その間もクロスは待ってくれない。
「深き闇、破壊の象徴、汝の力を我は求める、我が命を聞き届けよ、其の力を我に与え賜え……【デストラクション】」
放たれた黒い光線。
僕は防御にフィールツイスターを発動した。
いや、したつもりだった。
結果を言えば、発動しなかったんだ。
――魔力……切れ……!?
唖然として動けなかった僕に、光線全てが命中する。
「そこまで! 勝者クロス」
朦朧とした意識の中、雲一つない青空を眺めながら先生の声を耳にし、ゆっくりと意識を手放した。
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