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以前見た光景がそこにあった。
天井のないあの場所。壁はボロボロのあの場所。
そして、身体が消えかかっている少年のいるあの場所。
前に夢で見たあの場所だ。
「……生きたいか? 主――いや、■■■■……」
空中から降りてきた3人の内の1人が口を開く。
でも最後の言葉が聞き取れない。
何だったんだろう。名前?
「なに……?」
少年が、思わずといった様子で顔を上げる。
やはり顔はよく見えない。
「言葉の通りだ。お前に生きる意志はあるのか?」
今度は別の男が唇を震わせる。
その言葉に、何故か少年の瞳が揺れたように感じた。
「お、俺は……俺は生きたい! 生きてもう一度アイツに……アイツらに会うんだ!」
力強い少年の声。
もう胸まで消えかけている者のものとは思えない力強さだ。
いや、逆か。消えかけているからこその本音なんだろうな。
「ならば生きろ。元よりこの戦いは千年前に我らがヤツを仕留めきれなかったが故に起きたものだ。この時代のお前が消える必要はない」
少年を除く10人の男女が、優しい微笑みを彼に向ける。
それを受けた少年は戸惑った様子で口を開いた。
「助かる方法があるのか?」
「無論だ。方法は極めて単純。それは――」
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