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ふと時計を見れば、短い針は数字の6を少し過ぎていた。
それを認識すると無性にお腹が空いた気がする。
そういえば昼食を食べてなかったなと思いながら、僕は遠慮がちに口を開いた。
「夕食はどうするの?」
「あぁ、もうこんな時間か」
クロスもまた、時計に目をやりながら唇を震わせる。
そして次の瞬間にはニヤリと口端を吊り上げ、
「折角だ。豪華な飯にしようぜ」
上機嫌に腰を上げた。
僕達はそのままリビングと一体になっているキッチンに移動する。
「豪華と言えば……ステーキとか?」
「とりあえず材料を確認しねぇとな。何にせよ、あまりの美味さに感動……して、も……」
機嫌よく冷蔵庫を開けたクロス。
だが、クロスはピタリとその動きを止めた。
「どうしたの?」
問い掛けても返事がない。
何事かと冷蔵庫の中を覗き込もうとすると、クロスは突然扉を閉め、キッチンから追い出そうとするように僕の身体を押してくる。
「もしかしてクロスも食材がないとか?」
「っ!」
適当に言った言葉に、クロスの力が緩んだ。
――この反応……まさかっ!
力が緩んだ隙にクロスの腕を抜け、閉じられた扉を再び開ける。
……そのまさかだった。
「ま、まぁ俺様も人間だからな。失敗する時ぐらいあるさ」
結局、その日の夕食は家にあったカップ麺だった。
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