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「そうだったらいいんだけどね……」
フィアさんは私達が聞き逃さないように、はっきりとその言葉を口にする。
「冥王の置き土産」
“冥王”。その言葉に反応しない者はいない。
この場にいる全員の纏う雰囲気が変わった。
「……どういうことです?」
珍しく、リオンが問う。
「以前クラッドが言っていたの。属性神達の話によると、冥王は千年前に禁術を使って、ある魔物を召喚したらしいわ。でも、その魔物は強力過ぎた。呼び出した冥王ですら扱いきれず、自身にも危害が及ぶと察して封印したの。
その場所が、今のベルリオーズ付近らしいわ」
わずかに言葉を止めたフィアさん。
その続きは容易に想像できる。
「今回の行方不明者はそれが関係してるってことですか~?」
「確証はないわ。クラッドも時間がなくて捜す余裕がなかったようだし。
でも、冥王が消えた今、その封印が弱まってるという可能性があるでしょ?
それを確かめる意味でも、あなた達に行ってきてもらいたいの」
フィアさんは組んでいた指を離し、唐突に立ち上がった。
「これが私の推測通りなら、とても危険な任務になるわ。ホントはこんな任務に行かせたくないけど、冥王が関係してる以上はあなた達しかいないの。
行ってくれる?」
数秒間の沈黙。
そして私達はフィアさんに微笑みながら答える。
「なに水臭いこと言ってるんですか」
「任務なんだから断れないっしょ。まぁ任せてくださいよ」
フィアさんは驚いた顔で私達を見つめる。
けれどそれもすぐに笑顔に変わり、
「ありがとう」
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