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その吹雪は、前方の敵はもちろん、後ろの方にいる魔物も巻き込んで吹き荒れる。
セリスが左へ腕を動かせば吹雪も左へ、右へ動かせばそれも右に。
ピタリと吹雪が止むと、私達の前方には白銀の世界が広がっていた。
それは青白い光と相俟って、幻想的な輝きを放つ。
よく見れば、奥へ続く2つの道も壁ごと凍っている。
これで敵の増援が来ることもない。
「今の私じゃ、これが限界」
肩で息をするくらい呼吸を荒くしたセリスが戻ってくる。
「十分だ。帰って休もう」
そんなセリスの肩を抱いたリオンは、誰かさんのようにパチンと指を鳴らしてこう言う。
「【転移】」
瞬間、景色が変わった。
キラキラと眩かった洞窟とは打って変わって、いつもの見慣れた場所。
高級そうなソファーやテーブル、リビングと一体になったキッチン。
この間取り、間違いない。寮の部屋だ。
「ここって……」
「俺の部屋だ」
セリスをソファーに座らせながら、リオンが口を開く。
「転移魔法が使えるようになったんだね」
「まだ自分の部屋にしか行けないがな」
それでも使えるだけすごいと思う。
驚いてないのはシンぐらい。
たぶん一緒に依頼を受けたりしてたから知ってたんだね。
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