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もうそろそろ雪でも降りそうなこの頃。
窓の外の景色に色みはなく、それが冬の到来を語っているようだ。
外から打ち付ける冷たい風が、教室の窓を鳴らす。
しかし、その音さえかき消してしまいそうな、少女の荒い息づかい。
肩にかかるほどの長さの艶やかな藍色の髪は二つに分けられ、みつあみにされている。冷静さを失わない黒い瞳、機能性を重視したであろう縁のない大きなレンズの眼鏡。
一見すれば、学級委員でもしてそうな、どこにでもいそうな少女、どこにでもあるような風景。
だがそれを、一つのものが全て打ち消してしまっていた。
少女の手に握られている―――誰かの血に染まった細身のナイフ。
本来は銀色をしている刀身も柄も、震える少女の華奢な手さえも、どす黒く染まっていた。
そして、少女の目の前には―――死体。
学生服を纏った、黒髪の少年が、うつ伏せで倒れている。
意識があるのかは分からないが、どんどん広まっていく血だまりからするに、既に息はないだろう。
少女は深い呼吸を一回して、その表情とは裏腹にどくどくと激しく波打つ心臓を整えると、傍の椅子にかかっていたPコートを無造作に剥ぎ取り、鞄を肩にかけ、膝下まである長さのスカートを翻し、急ぎ足で教室を出た。
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