プロローグ

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「宝探しの地図なんですけど」  春日部卓(かすかべすぐる)は、会社の休憩室で同僚と話をしていた。 「馬鹿馬鹿しい。子どもじゃあるまいし」  小川康史(おがわやすし)は、そう言うと、ふう、と煙草の煙を吐き出した。 「そうですか」  卓が地図をポケットにしまおうとすると、 「あっ、待て待て、ちょっと見るだけ見たいから」  康史は慌てて煙草をもみ消して、地図をひったくるようにした。  少し眺めてからすぐに、卓に返した。 「誰から?」 「それがですね、直にポストに入れたみたいで、誰だか分からないんですよ」 「近所の子どもの仕業だろ。宝の地図とはね。おおかたがらくたでも」  ぶつぶつ言っている康史を尻目に、卓は、  「僕は今夜、行きますけどね」  休憩時間が終わるから僕はこれで、と言ってその場を後にした。
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