プロローグ

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 その日の夜。  地図の場所は、前日の雨で地面がぬかるんでいた。  卓は、長靴とスコップという完全装備。 「結局、来たんですねえ」  と卓は言った。  康史は実際には興味津々だったようだ。  康史は、がっしりした体躯で見た目はいかつい。反対に、卓は小柄だった。だから今回、地面を掘る体力仕事ということで康史に声をかけたのだった。  康史の、いかつい見た目と、好奇心旺盛な子どもっぽい内面とのギャップがおかしくて、卓はクスクス笑った。 「うるせえよ」 「ああ……すみません……」 「で、どうだ」  康史が訊いた。 「どう、と言いますと?」 「ありそうかって言ってんだよ」  少し苛立たしげに康史は言った。  卓はいったんスコップを懐中電灯に持ちかえて、屈んだ。 「ええ……、なんか、それらしいものがありますねえ……」 「本当か!? どれ」  康史も手を止め、地面を見る。 「ううん……これは」  と卓。まじまじとそれを見ている。 「……? これは……なんだ?」  康史には、それが何なのか分からなかった。 「そうですね……、見た感じ、人の指のようですねえ……」 「……!?」  地面から、人の指が生えていた。  雨が降った後で土が流され、指だけが地表に露出していたようだった。  二人は、しばらく沈黙した。
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