彼女

6/17
前へ
/335ページ
次へ
「え、えっ!? 相良く…」 「ゴメンな。俺のせいで嫌な目に合わせて」 「だからそれは…」 「俺のせいだよ。千紗が何と言おうと。…本当に、悪かった」 「……」 有無を言わせないような彼の様子に、あたしはそれ以上何も言えなくなってしまった。 男の子から抱きしめられるなんて、初めてだ。 組み手とは全然違う。 温かくて、優しくて。 "守られてる"という安心感がある。 「千紗が無事で良かった…」 「相良くん…」 …少し震えてる? 「もう、俺は近付かないから」「え…?」 「じゃあな」 それだけ言うと、相良くんはあたしから離れてスタスタと歩き始めた。 追いかければ、すぐに近づける距離。 でも、金縛りにあったようにあたしは動けなかった。 .
/335ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1689人が本棚に入れています
本棚に追加