体育祭

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「蜘蛛…嫌いなんですか?」 ブンブンっ さっきより勢いよく、何度も頭を振る。 「………」 「………」 沈黙が、辛い。 佐藤くんの言いたいことは分かるよ! 普段、何ら女の子らしくないのにあんな小さい虫が苦手、なんて。変、でしょ? でもっ。 苦手なものは苦手なんだよ!? 頭の中で言い訳を繰り返すあたしの頭をそっと撫でると、 「大丈夫ですよ。少し離れてて下さい」 佐藤くんはそう言って優しくあたしの体を離した。 手際よく手にしていた本に蜘蛛を乗せると、ガラガラと窓を開けて、蜘蛛を外に逃がす。 眼鏡の奥の、優しい眼差しから。目が離せなくなった。 .
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