愛惜

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「ありがとう、大分楽になったよ。」 少しして、顔をこちらに向けお礼を言った。 「良かった!他に何か出来る事ある??」 再び紫炎に訊ねた。 紫炎は前を向いて黙ってしまう。 少しの沈黙の後、口を開いた。 「………じゃあ、こうしてて…?」 肩に置いてあった芽咲の手を取り自分の首に絡めた。その手を抱き締めるように上から紫炎の手が重なる。つまり、芽咲が後ろから紫炎を抱き締める形になった。 「えっ///?!! し、紫炎っ!!待って///!!」 慌てふためく芽咲を余所に、手に力を込めて離さない。離してくれそうにないと悟り、離す事を諦める。 ただ紫炎はじっと動く事もなく下を向き、芽咲の手を抱き締めている。 その紫炎の姿に違和感を抱く。まるで、何かに怯えている子供のようで、大きな不安を抱き締めているようで。紫炎を取り巻く空気がどこか寂しく冷たく見えた。 (紫炎……………?) 表情は見えないが、 ただひたすらに体を固くして動かない。 そんな紫炎の様子を見て、優しく力を込め腕を絡めた。体を密着させ、安心させるように抱き締めた。 一瞬、紫炎は驚いたのか、体がビクッとなったが再び腕に力を込めた。 どれくらいそうしていただろう。 抱き締めている間、お互いに一言も話さなかった。 .
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