愛惜

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「………ありがとう…………」 紫炎が小さな声で呟き、腕をゆっくり離した。 芽咲もゆっくり離れ、紫炎の様子を見守る。 すると、タイミングよく控え室の扉がノックされた。 「専務、お時間です! 会場に戻りましょう!」 経悟がドア越しに声を掛けた。 紫炎は立ち上がり、背広を来て服を整えてからドアへと向かって歩き出した。 その後を芽咲も着いていく。 紫炎の顔を見ると、いつもの緊張感漂う仕事の顔に戻っていた。 心の中で安心する反面、どこか引っ掛かり先程の姿はなんだったのだろうと不安に思う。 しかし、接待に戻る為気持ちを切り替え、部屋を後にする。 村岡との商談も無事成立し接待も終盤。 突然、会場が騒めきだした。何事かと思い、会場の入り口の方に目をやると、一人の人物に目が止まった。 それは、深海 龍太郎(ふかみりゅうたろう)。 紫炎の父であり、我が社の社長であった。 .
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