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ゆっくり歩みを進めると、微かにだが何か音が聞こえる。
進めば進む程その音ははっきり聞こえた。
「…………ぅっ!グス……ふっ……」
(泣き声…………?)
それは小さな女の子の泣き声に聞こえる。
ちょうど木の影から、休憩やお茶が出来るようにと作られた木のベンチが見えて来た。
静かに顔を覗かせると、そこにはベンチに座り声を一生懸命我慢し大粒の涙を溢す小さな少女がいた。
(芽咲!……泣いてる……)
「ヒック…!ふぇ……お……母さ……っ!お父……さん…!」
手には二人の写真が握られていた。紫炎は驚き立ち尽くしていた。
芽咲の泣いている姿を見るのが初めてだったからだ。
深海の家に来てからと言うもの、一度も何があっても泣かなかった。両親のお葬式の時でさえ芽咲は泣かなかったのだ。
それどころか、いつもニコニコと周りに笑顔を見せていた。
いつだって笑顔を絶やす事なく笑っていたからだ。
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