幕開け

23/37

123人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
「専務!! 先程頼まれた資料ですが!…………専務?」 経悟の声も、何も耳に入らない。 ただ彼女が出ていった扉を見つめるしかなかった。 熱が急速に冷めていく。目の前の視界も暗くなる。 (また……、あの時と一緒だ。芽咲が家を出ていった日。 彼女が荷物を持って玄関を出ていった時も、目の前が真っ暗になった。体が冷たくなっていく。 固まって動かなくなって、自分の意識がどこか遠くへ行ってしまうような感覚…) 「……専務、顔色が優れません。本日はお休みになられた方が良いかと…。」 心配そうに伺う。 「今日はどうしても終わらせないといけない仕事が残ってる。 薬も飲む。大丈夫だ…、」 そう告げ、席に戻り机の上に置いてあるコップと薬に手を伸ばす。 「…こちらの薬は?……先程の方が持って来て下さったのですか?」 「あぁ……。」 それ以上は何も言わなかった。 「確か経理課の樹さんですね。とても気が利く方ですね?」 優しく微笑み紫炎を見た。 「……そうだな。移動するのも面倒だ。今日はここで作業を進めよう。始めるぞ!」 少し笑って見せ、又真剣な顔つきでPCを見つめた。 .
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

123人が本棚に入れています
本棚に追加