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車から倉松が降り、後部座席のドアを開けた。
「紫炎様、お迎えに上がりました!芽咲様もご一緒だったのですね。」
少し驚きながら声を掛け、2人が車に乗り込んだのを確認してからドアを閉めた。
「…ありがとう。先に芽咲を送ってもらえるか?…それから自宅に……。」
「待って!!紫炎が先。倉松さん、紫炎熱があるんです。私は後でいいんで紫炎を先にお願いします!」
紫炎は芽咲を先に送りたかったが、車に乗り座った瞬間、張り詰めていた糸が切れ、いつも会社にいる時だけ漂わせる緊張を解いた。
意識が朦朧とし窓に頭を寄りかかり、目が重たくて開かなくなってきた。
芽咲の意見に反対しようにもそんな気力もなく、渋々従いすぐに眠りについた。
「かしこまりました。紫炎様も熱があるようなので、先にお送りしましょう。」
「有り難うございます。」
静かに車は走りだした。紫炎はとなりで辛そうに寝ている。
(今日は紫炎の看病しなきゃ。)
紫炎は会社の近くにマンションを借りて、一人暮らしをしていた。
会社の近くにマンションを借りたのは、緊急時でもすぐに会社に行けるようにする為だった。
芽咲が家を出てすぐに紫炎も家を出たが、まだ紫炎の部屋へ上がった事はなかった。
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