恋煩い

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「芽咲、聞いて欲しい事がある。……芽咲は俺の事を家族と思っているかもしれないけど、俺はっ!…俺はずっと、……芽咲の事を一人の女性として見てきた。 芽咲が出ていった日から俺はずっと苦しかった…。 芽咲が深海の家を気にしながら生活していた事は知ってる。けど、俺はずっと家族と思えなかった…。 ここ2、3日そばにいてこの気持ちを隠したり、殺す事は無理なんだって気付いた。 周りに何て思われようと、言われようと構わない!中途半端な思いじゃない!!だから「紫炎っ!!」 大きな声で、話し続ける紫炎の声を遮った。 “周りに何て言われようと”という言葉に反応した。 信じられない思いでいっぱいで、頭が真っ白になった。 『こんな事ってない……嘘でしょう……?』 理解が追い付かず実感が湧かないが、少しずつ頭を整理し理解していく程、高まる気持ちを抑えられず、溢れる思いが零れそうになった。 『私も好き…。紫炎は大切な家族だけど違う…。もっと大切な……』 しかし、“周りに何て言われようと”という言葉を聞いてハッとした。 今まで私が送ってきた生活は? 何を大切にし何を守ってきたの? もしここで私が自分の思いを伝えてしまったらどうなるのだろう? 世間は私達を何て言うのだろう?深海の両親は? 一瞬2人の悲しそうな顔が浮かぶ。 私より紫炎はどうなってしまうの?彼には大事な立場がある。彼には守らなければいけないものがある。私はそれを平気で壊すのか……? そんな考えが頭を過り、紫炎の言葉を遮った。 顔を俯き、震える声を必死に抑え、平静を装い言葉を紡ぐ。 「紫炎…。私は、………………紫炎の事そんな風に……………思えない……。 紫炎は深海の家を継ぐんだよ?こんな事誰かに知られたら…! それに、紫炎の思いは単に、家族のいない私に対する同情の思いや、優しさであって恋愛感情じゃ「違うっ!!!……俺は同情何かでお前を好きになったんじゃない。この気持ちに気の迷いや冗談なんて微塵もないっ!! 芽咲が世間の目や周りの目を気にしたり、気を使ってるのは知ってる。けど、そんなの関係ないくらいにお前の事が好きだ! それに俺はそんな事聞きたいんじゃない!芽咲自身の気持ちを聞きたいんだ!」 .
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