愛惜

9/41
前へ
/153ページ
次へ
車を走らせる事一時間弱。 特に会話をするでもなく、お店に着いた。ぎこちないものの先程のように重苦しい空気でもなく、芽咲は窓の外の景色を眺めていたのだった。 駐車場に車を停めると、紫炎が先に降り助手席のドアを開けエスコートしてくれる。 紫炎の後を着いて建物に入ると、奥から着物を着た綺麗な女性が出迎えた。 「ようこそお越し下さいました。」 ここの料亭の女将と思われる女性が頭を深く下げ、紫炎に挨拶をする。 「急にすまなかったな。個室は空いてるか?」 「勿論、若のためにご用意出来ておりますよ。さ、こちらへどうぞ。ご案内致します。」 そういうと案内され奥の個室に通された。 部屋は和室で広く、オレンジ色の照明が温かく落ち着いた雰囲気を出しており、窓の外の庭は立派なもので又月が綺麗に見える。 席に着くと、早速出されたお絞りで手を拭き食前酒に口をつけた。 辺りをキョロキョロと伺ってしまう。 それもその筈。建物を見て分かるがかなり豪華な懐石料理屋に来たのだからだ。 .
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

123人が本棚に入れています
本棚に追加