豆もやしの唄

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  「――なんだ、これ」  つい発していた独り言に、ハッと我にかえる。周りを見渡し、誰もいない事を確認してから安堵の息を吐いた。  時々鬼に化けてしまう母親に聞かれては、自分の身が危ない。翌日の朝食抜きなんて……餓死だ、餓死。畜生。  独り言の原因はテーブルの上にあった「先に食べてて」の書き置きだけではない。  もう一度テーブルの上を確認。そして一つの小皿を取る。小皿の上の……もやしっぽいもの。名前は知らない。とりあえず野菜だ。  食欲旺盛で育ち盛りの高校生。そしてこの立派な日本男子に細っこいもやしを食べさせたいのか。もしくは暗に“もやしっこ”になれと言われているのか。  思わず眉間に皺が寄る。つい皿を持ち上げて眺めてみるが、特に変わったところは見当たらない。……せいぜいもやしの先端に豆っぽいのがついているくらいか。  他にも無いかとテーブルに目を向けると、四人分の豆腐しか無かった。  
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