君が見えなくなる。

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学校へ着いた私は校門を過ぎ去りながらも正面に見える校舎から視線を上へと向けそこにある時計で時間を確認する。 只今の時刻6時50分。 予定通りの時間に着いたことに安堵の息を吐けば口端をつり上げ笑む。 視線を再び真っ直ぐにと向け鞄を肩に掛け直せば急ぎ足でサッカー部が練習する運動場へと向かった。 運動場へと来てみれば、まだ本格的には練習を始めてはいないがランニングをしている人や足の上でボールを跳ねさせリフティングをしている人と、他にもそれぞれのことをし自主練とやらは既に始めているようだ。 目の前にかかる運動場と校舎の仕切りにとある緑色の網の穴に指をかけ穴の間からその様子を見ていれば、いつもの低音が聞こえた。 「お前、昨日のストーカーとちゃうん?朝からご苦労さんやなぁ」 あちらから話しかけられたということに驚き過ぎて唇を薄く開いたまま反応できない。 己の心臓がいつもよりも速く脈打つ中、目を見開き固まっていたが、数回瞬きすれば心臓も落ち着いたようで声のした方を振り向く。 すると、一つのボールを右腕に抱えるように持ち眉を寄せこちらを睨むように見る赤銅が目に入った。 まだ自主練だというのに赤銅からは大量の汗が流れていて頑張ってるんだなぁと思うと思わず笑みが溢れた。 しかし私とは正反対に赤銅の眉はさらに寄る。
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