君が見えなくなる。

2/16
前へ
/16ページ
次へ
今日は日曜日。 榛那は先週の日曜日を繰り返すように、普段通りまだ夢の中にいた。 時折口が開き、声を発しているが言葉になっていないため何を言っているのか聞き取ることが出来ない。 榛那の中での日曜日は、朝の7時に起きるのに比べ、昼まで寝てだらだらと過ごす。 もちろん今日もそのつもりだったが、それはただのつもりに終わってしまった。 その理由というのも、七瀬からの電話。 七瀬からかかってきた時に鳴る特有の着信音に、体が強張った。 不思議と普段の日曜日を壊されたというのに不快感は抱かなかった。 ベッドの近くにある机の上に、視線を向けずに体を寝かしたまま急いで携帯を取ろうと手を伸ばす。 体が思ったように機能せず、机の上を滑らせて携帯を探すということが出来ない。 そのつもりはなくても、まるでもぐら叩きのように机を叩き机の一カ所一カ所を探すことになってしまった。 そうしているとようやく携帯が見つかったのか手の平で掴めば己の元へと引き寄せ、顔の近くまでもっていけば携帯の屈折部分の横についているボタンを押し携帯を自動で開かせる。 開いた時の振動で手が前に揺れた。 電源ボタンにいこうとした親指をすんでで止め、通話ボタンを力のあまり入らない親指で押す。 すると、携帯を耳に近付けていないにも関わらずはっきりと声が聞こえた。 そういえば、電話の音量5にしておいたんだっけ。 そう思いながらもまだ覚醒していない頭を働かせようと今度はちゃんと耳に携帯をあて一生懸命話に耳を傾ける。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加