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夢で見た赤銅は綺麗に微笑んだ。
私はそれが正夢になるんだと信じたかった。
いつまでも見ていたかった。
ただ単純にそう思っていた。
なのに私は急に感じた息苦しさで目を覚ました。
すると目に入ったのは赤銅の顔。
虚ろな目で赤銅の手の先を探れば、私の口と鼻へと伸びている。
あぁ。私、赤銅に息止められそうなんだ。
そんなことを馬鹿みたいに冷静に思った。
さすがに死んでしまう。
そう思って私の上に乗る赤銅の腹を狙って蹴る。
上手くは当たらなかったが、どいてはくれたので結果的にはよしとしよう。
その場に倒れ込んだ赤銅のことを気にかける余裕もなく、反射的に肺へと息を吸い込めば、体がそれについていけなくて咽せる。
喉元を右手でおさえ俯きながら私は咳をし呼吸を整えた。
生.理的に出た涙を右手で拭う。
私の呼吸が整うのを待っていたかのように赤銅が立ち上がり私の方を怪訝そうに見つめる。
なんでそんな目で見るの?
そんな私の疑問は次の言葉で消え失せた。
「誰やねん、お前。勝手に人の部屋に入ってきて…ストーカーかボケ!」
私の何かが壊れた気がした。
突き放さないでよ。
なんでそんな…変なものを見る目で見るの?
「出てけよ。出てけゆぅとるんや!」
明らかに向けられた敵意に体が強張る。
そして次の瞬間震えた。
拒絶されている。
それが堪らなく悲しくて。
もう死んでしまいそうで。
堪えきれなくなって、私は赤銅の部屋を飛び出した。
入った時とは違って、荒々しく。
君が見えなくなる。 3
夢の中の赤銅は、
きっと微笑んでいたんじゃない。
嘲笑っていたんだ。
それに今気がついた。
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