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自分の家へと着いた私は、真っ先に自分の部屋へと向かう。
慌ただしく帰ってきた私にお母さんが疑問の声を発したが、今の私にとってはただの背景にしか思えない。
自分の部屋に着けば、目指すはベッド。
枕目掛けて勢いよく飛び込んだ。
ベッドのスプリングがギシギシと鳴り、勢いの度合いを示す。
枕をしっかりと抱き締めれば、すがりつくように私は泣いた。
明日瞼が腫れるかもしれない。
そんなことは頭になかった。
いや、入れる隙間もない。
『赤銅』
その人物だけが、私の中を埋め尽くす。
ねぇ、なんでなの?
なんで拒絶するの?
私のこと、好きじゃなくなったの?
疑問ばかりが私の頭を埋め尽くし、答えなんて見つかりやしない。
見つかったとしても、ただの自己満足に過ぎないんだ。
答えの証明が見つかるわけじゃない。
確かに好きなんて言葉、そんなに言われたこともない。
私も、言ってくれなきゃ心配というわけじゃないから気にしない。
赤銅は、口下手だから。
幼なじみの私はもう慣れてる。
でも、幼なじみの私だからこそわかる、あの本気の言葉。
誰ってなに。
本当にわかんないの?
…いや違う。
わかんないのは私だ。
馬鹿だったのは私だ。
答えはこんなに簡単に出るじゃんか。
あの時は衝撃的過ぎて、冷静さを失っていたけど。
今冷静に考えてみれば、単純なことだ。
赤銅の言ったことは、今の赤銅にとっては当たり前。
赤銅の言った『誰?』という単語と疑問符。
そこから導き出す答えは、冗談がありえないとしたらこれしかない。
赤銅は、私のことを忘れた。
きっとそう。
じゃぁ七瀬とか、他の友達のことも忘れてる?
…それはわかんない。
名前を出すことはなかったし。
そういえば、あそこが自分の部屋ということは理解していた。
人の名前だけ忘れたのだろうか。
突き放されてしまった私には、それを聞く術もない。
君が見えなくなる。 4
嫌いになったから突き放されたわけじゃなくてよかった。
あぁ、でも。
もちろん嫌いだと突き放される日が来るかもしれなくて。
大嫌いだと突き放されてしまうくらいなら。
大好きだと、
突き放してしまおうか。
それならまだ。
笑ってさよならできそうな気がする。
赤銅にとっての私は、笑顔でいたいから。
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