君が見えなくなる。

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散々泣いた私の目は、見事に腫れていた。 なんだか気になって擦ってみるが意味はない。 日本人によくある奥二重な私の目は、今は二重。 いや、二重というにはあまりにも無様だ。 これで綺麗な二重だったら私は喜んだだろう。 だが目が腫れるということが幸運をもたらすわけがない。 幸運をもたらすというのなら、毎日でも感動する本や映画を見て泣くというのに。 私は鏡の前で溜め息を吐き、歯ブラシを手に取れば歯磨き粉をそのブラシの上にのせる。 まだ新しいそれは、軽く押しただけで姿を現した。 歯磨き粉を元あった棚に戻せば、口に歯ブラシを含み歯の上に円をかきながら左右に動かす。 ふと時間のことが頭に過ぎり視線を下に落とし携帯の時計を確認する。 只今の時刻は6時。 家から学校へは近いため10分も歩けば着く。 何故こんなに早く行くかといえば、別に委員会があるとかそういう真面目な理由でもない。 いや。この理由も私にとっては大真面目な理由なのだが。 ただ、赤銅に会いに行くだけ。 確かめたかった。 赤銅は、私のことを忘れたのか。 私のことだけを忘れたのか。 それだけを確かめるのにこんなに早く行くのは、泣き顔をたくさんの人に見られたくないから。 この時間なら、赤銅の所属するサッカー部しか朝練をやっていない。 だから安心。 泣くことが決定してるのは、自信もてないからかな。 そんな自分がとてつもなく不甲斐ない。 鏡に映る自分の口から泡が溢れ出していることに気付く。 歯ブラシを置けば、蛇口から水を出し手にその水をためれば口に含みまた吐き出す。 それを数回繰り返したあと、予め用意してあったタオルで口元を拭く。 そういえばと思い出し顔を洗ったあと再びタオルで顔を拭いた。 己が先程置いた歯ブラシを手に取れば、親指で軽くブラシの部分を擦りながら水で洗えば軽く振り水気を飛ばし棚へと戻した。
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