221人が本棚に入れています
本棚に追加
真夏の照りつける日差しの中、高校の制服に身を包み不機嫌そうな顔で詩織は自宅である鞍隆寺の石段を足音高く下りていた。
「イライラしすぎて寝不足だわ……!」
文句をブツブツ言いながら詩織は通いなれた学校への道のりを歩く。
「詩織ーっ!」
後ろからかけられた声に詩織は振り向く。
そこには息を切らして走ってくる親友の朱里の姿があった。
その姿に詩織の表情が和らぐ。
「おはよ、朱里」
「おっはよー」
詩織の元まで辿り着くと朱里は膝に両手をついて大きく肩で息をしながら挨拶をかわす。
「全く、夏休みだってのに学校に行かなきゃいけないなんて、ホンット、サイテーよね!」
息を整えてから朱里が顔を顰めながらそう文句を言う。
それに詩織は呆れたような表情をしながら笑う。
「仕方ないじゃない? 登校日、なんてものがあるんだもの」
「高校生にもなって登校日って何?」
小学生じゃあるまいし、と朱里の怒りは収まらない。
「田舎だしね」
仕方ないでしょ、と詩織は肩を竦めながら答える。
それに納得してないような顔で朱里はブーブー文句を言っている。
最初のコメントを投稿しよう!