突然のプロポーズ!?

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 昼間は嫌になるくらい地上を照りつけていた太陽がその姿を隠し、代わりに控えめに地上を照らす月が姿を現した頃、詩織は一人山の中を歩いていた。  時折ガサガサと木々の葉を揺らす音が聞こえる。その都度視線だけをそちらにやり、異常がないと分かればまた前をまっすぐ見据える。  しばらく歩くと生い茂る木々が途絶え、中央付近に巨大な岩のある少し開けた場所に出る。  詩織は足を止め、注意深く辺りを見渡す。  突如、一陣の風が吹き詩織の長い髪を舞い上がらせる。詩織はそんなことなど気にせず厳しい視線を前方へと投げつけ、ボソリと呟く。 「やっと、来たわね……」  詩織の視線の先には岩の上にいつの間にか現れた一体の妖魔が対峙していた。  その妖魔、姿形は人間とほぼ変わらないが白く長い髪を風に靡かせ、鋭く長い爪をもっている。  そして赤く妖しく光る瞳で詩織の姿を見つめている。その口に不敵な笑みが浮かぶ。
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