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「風邪を引くぞ」
「え――?」
急にあたしに叩つける雨が遮られたと思ったら、背後から聞こえた声にゆっくり振り返ると、哀しそうに顔を歪める綺麗な男の子が立っていた。
あたしに傘を差し出して――。
「お前が泣くから、降りてきてしまった」
「え、あの…」
「水城ハルカだ。好きに呼べ」
「……;」
いや、そうじゃなくて。
いきなり現れた貴方は誰?
降りてきたって何処から?
そして何故、傘もさしてない貴方が濡れてないの…?
頭に浮かぶ疑問の数は数え切れないくらいで、それでも一番にあたしの頭を支配している問題は、彼の体が雨を弾いていること。
というか、彼と雨の間に何か薄い膜があるみたいな、感じ?
「とにかく家に帰るぞ。このままでは本当に風邪をひく」
「ちょっ、!」
家に帰るって誰の!?
というか何でこの人こんなに馴れ馴れしいんだ。
あたし、初対面だよね?
ギュッと握られた手に引かれて、傘を持たされたあたしは、突然現れた男の子に強引に引きずられていった。
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