24人が本棚に入れています
本棚に追加
「スピカ副隊長さんが居ようが居まいが、この隊は終わっているんです。不愉快です」
アクスが、そのまま外に出る。彼は、スピカや複雑な事情を持つ隊長を煙たがる理由は有名だ。
アクスは、ユーリ邸のメイドのカリンに惚れていた。然し、カリンは、スピカに惚れている。所謂、嫉妬というものが渦巻いている。そして、複雑な事情を持つ隊長とはただ反りが合わないだけのこと。二人はそれを知っているから、アクスを追いかけずに、資料整理を続けた。
「カリンさんが帰って来たら何か分かるかな?」
何事も無かったように、悪党の事情聴取をした資料やら犯罪歴が纏めてある紙を重ねたアスカが首を傾げる。
カリンもスピカと共に南国の別荘へと出向いたのだ。どうやら、悪魔消滅時に討伐地区に居たと伝わっている。
副隊長と隊長が不在で既に二カ月を経過していた。二カ月の間に情勢も変わる。ラッドサンド大陸では政府対神官の対立が、一触即発の状態にある。
「まあの。カリン殿が帰られるまで下手な憶測はせん方がいいだろう。それより、今はこの紙を束ねる作業が先だよ。アスカ殿」
南国での出来事は、神官が幻月を利用して幸せの箱(ハピナス)を呼び出そうとして失敗したとあった。その折り、スピカや茶髪の青年が何故悪魔討伐地区に居たのかまでは書かれていない。ヒルも疑問は尽きなかったが、カリンが帰るまでは真実を突き止めることは難しかった。
最初のコメントを投稿しよう!