overture

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「ねえ。これが終わったらカリンさんを迎えに行こうね」 「そうさのう。確か、夜の船で着くと聞いているゆえに、出迎えに行くか」 「やったあ。早く終わらせようね」  アスカが、先程より手早く紙を束ねる。第一等事務所の主な仕事は資料整理で、老人でも出来る簡単な仕事として冷やかされる立場にある。  然し、アクス以外の隊員は特に仕事内容に疑問はなかった。割に合った仕事、時々、悪党退治を繰り返して一日を平和に終えるのが日常といえるのだ。  資料整理を終えた頃には、日は陰りを見せる。事務所の掃除だけ済ませた二人は、船着き場へと向かう。  カリンが乗る船が来るにはまだまだ時間があったので、切符切りの婆様と一緒に、潮の薫りが漂う不思議な湖を眺めて雑談を繰り広げる。  やがて、船が見えた。最終船の小さな船がミフィア湖に到着し、大陸からの帰宅客に混じって蒼髪のメイドが降りてくる。それがカリンだった。その後から二人の見知らぬ女達が続く。一体何事かと二人が近寄れば、カリンが長い蒼髪を揺って頭を下げる。 「ヒル様、アスカ様、お出迎えありがとうですの。主のユーリから伝言を受けております。馬車を用意しますので、お時間あればユーリ邸に来るようにとのことですわ」
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