overture

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「聞きたい話が沢山ありますからの。是非、お願いしたく思います。ところで、其方は……」  ヒルは、女達に視線を投じる。カリン以外の三人の娘には残念ながら見覚えが無かった。娘達は、皆メイド服なるものを纏う。ヒルは若々しい娘達が島に増えたことに僅かに悦んだ。 「主のメイドですわ。自己紹介は後ですの」  カリンの元気がない。それには気付いてヒルは、眼を向ける。良く見れば泣き痕が頬に残る。深くは聞かずに、船着き場の外に居た馬車に乗る。  住宅街の奥地にある邸までの林道が、奇妙な光景を作り出していた。  やがて、馬車が停まり彼等は降りる。中庭を歩き邸の玄関を潜ると主のユーリが出迎えて、客室に案内した。  客室には、ユーリの恋人であるルティアナが茶菓子を用意して待ち受ける。  促された席につき、アスカが用意された菓子をつつく。ヒルはカリンに席を譲って、話を聞いた。  カリンの話はそれから数時間続く。それは、南国で起きたことで、ヒルやアスカにしてみれば、別世界の物語だったといえる。  然しながら、カリンの説明は報告とさほど変わりがない。 「スピカ様が隊長とあの詐欺師とリムへ消えたのが心配ですの」
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