第三十八話 【銃腰姫と天下人】

5/17
前へ
/70ページ
次へ
時は流れても、私の中の劉備は小さくなるどころか、ますます大きくなった。 その後も、呂布に追われ、幾度となく命を狙われても泥臭く生き続けた劉備。 私はテレビで劉備が取り上げられるたびに胸をときめかせた。 そして、何十万にもの民の前での大演説。 『ここいらでこのキャラバンは解散だ!けど、俺はまだ天下を諦めてねぇ!』 ブラウン感越しからも伝わる熱。 劉備を求める民の声。 私はそれを食い入るように眺めていた。 『きっと迎えに来るぜ!その時はまた、俺に力を貸してくれぇ!』 劉備という宇宙は、果てしなく広がっていく。 世界は小さく、そして大きい。 女の私は、劉備の迎えをずっと待っていたのかもしれない。 そう、この日を。 父さん、私はとても幸せです。  
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

426人が本棚に入れています
本棚に追加