第三十五話 【新たな戦いの始まり】

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劉備「お~!久しぶりだな、おっちゃん。」 長沙のとある城の屋上。 劉備に気付くと伊籍は朗らかに微笑んだ。 伊籍「お久しぶりでございます。」 劉備「元気そうでなにより。ところで…。」 見ると、伊籍の後ろで白髪混じりの男が明らかに年下の劉備に臣下の礼をとっている。 劉備「いいよ、堅苦しいのは苦手だ。」 「いや、そういうわけには。」 彼の厳格で丁寧な態度に劉備は照れてしまった。 劉備「あんただね、関羽と良い勝負したっていうじいちゃんは。」 伊籍「ええ、黄忠殿です。」 劉備「はじめまして、黄忠殿。」 黄忠「…実は初めてではありませぬ。」 黄忠は初めて顔を上げた。 落ち着いた声が響く。 伊籍「あ…、そうそう。あの命がけの宴の時に。」 蔡瑁による劉備暗殺計画。 あの宴の日、黄忠は戦地の状況報告のため、会場に訪れていた。 劉備「おお!そういえばあの時、おっちゃんが居なかったら死んじまってたよ。」 劉備はニヤニヤしながら自分の死を笑った。
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