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呉国太の綺麗な声が、静かな堂に反射して美しく響いた。
しかし張り詰めた空気も、天性の人懐こさを持つ劉備には意味がなかったようで、劉備はおどけて笑った。
劉備「いかにも、お義母様。」
呉国太「まずは、先年の戦勝を祝おう。」
呉国太と劉備は用意された盃を傾けた。
劉備「いい地酒だ。口いっぱいに甘さが仄かに広がる。」
呉国太「そのようなことより、我が軍が南郡を攻めている折、お主らは南を平定したとそうじゃな。」
劉備「ええ、あの戦は孫劉対曹の戦い、協力に対して礼など無用ですよ。」
呉国太の苦言を劉備は逆手にとった。
呉国太「ほう、あれを協力とみなすのか。」
傍らに侍る呂範は、呉国太の一挙手一投足に注意を払った。
呉国太のサインを見逃さぬように。
劉備「後顧の憂いを絶つことの重要性は、軍人ではないお義母様にはわかりますまい。ねぇ、呂範殿。」
急に話を振られた呂範は驚いた様子で、
呂範「え、あぁ、まぁ…。」
などと、曖昧な返事をした。
呉国太「戯れるな、我とて武門に嫁いだ娘。」
劉備「ならば、我々の行動を協力と言った理由もお分かりのはず。」
劉備はもう一度、盃を傾けた。
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