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呉国太「…はっきり言えば、私はお主が憎い。」
呉国太は伝う涙を拭いもせずに続けた。
呉国太「まだ幼き娘を、国の為にお主にやらなければならぬのは断腸の思いである。」
劉備が孫仁と契りを結べば、対曹操にこれぼど有効なことはない。
先の大戦にて曹操を破ったとしても、いずれ再起した曹操軍は侵略してくるだろう。しかし、劉孫が共同戦線を組めば、多方面からの攻撃が可能になる。
呉国太「私は…、この国を愛しておる。」
テーブルに置いた呉国太の手が小刻みに震えている。
それが怒りからなのか、悲しみからなのか、劉備にはわからなかった。
呉国太「しかし、それ以上に娘を愛しておるのだ。」
国祖の妻であり、国の元首の母である彼女が初めて見せたありのままの自分。
劉備は静かに笑った。
劉備「わかるよ、義母ちゃん…。」
劉備「あんたの国を想う気持ちも娘さんを愛する気持ちも、そして…。」
劉備「今ここで、俺を殺そうとする気持ちも。」
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