第三十七話 【甘露寺の会談】

9/11
前へ
/70ページ
次へ
呉国太「…はっきり言えば、私はお主が憎い。」 呉国太は伝う涙を拭いもせずに続けた。 呉国太「まだ幼き娘を、国の為にお主にやらなければならぬのは断腸の思いである。」 劉備が孫仁と契りを結べば、対曹操にこれぼど有効なことはない。 先の大戦にて曹操を破ったとしても、いずれ再起した曹操軍は侵略してくるだろう。しかし、劉孫が共同戦線を組めば、多方面からの攻撃が可能になる。 呉国太「私は…、この国を愛しておる。」 テーブルに置いた呉国太の手が小刻みに震えている。 それが怒りからなのか、悲しみからなのか、劉備にはわからなかった。 呉国太「しかし、それ以上に娘を愛しておるのだ。」 国祖の妻であり、国の元首の母である彼女が初めて見せたありのままの自分。 劉備は静かに笑った。 劉備「わかるよ、義母ちゃん…。」 劉備「あんたの国を想う気持ちも娘さんを愛する気持ちも、そして…。」 劉備「今ここで、俺を殺そうとする気持ちも。」  
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

426人が本棚に入れています
本棚に追加