426人が本棚に入れています
本棚に追加
また同じ夢を見た。
自らの頭から鋭く長い角が生え、周囲の人々を躊躇いもなく突き刺して殺し、それでもなおその角はドンドン大きくなり、しまいには私自身も死んでしまうという不快な夢。
身をつんざくような苦しい動悸でいつも私は目覚める。
この夢を見るときは決まって戦いの前と後。
言うなれば、私は乱世の悪夢に取り憑かれていた。
黄忠「…おい、魏延。」
黄忠の低く落ち着いた声で彼は目覚めた。
黄忠「彼は魏延。まだ若年ですが、その求心力で有志の若者達を率いております。」
魏延は劉備に気付き、顔いっぱいの汗を拭いもせず、慌てて礼をした。
黄忠「彼は旧政権においても親劉備派でして、曹操に追われるあなたの退路を陰ながら確保したり、この度の長沙攻略においても民を先導するなどで活躍しております。」
劉備は驚いた顔で、魏延の顔を覗き込んだ。
劉備「へぇ~、ありがとな。」
魏延は少し照れた様子でようやく悪夢でかいた汗を拭った。
その魏延の肩をポンと叩いて劉備は笑った。
劉備「嫌な夢を見たのかい。」
魏延「…ええ、まぁ。」
劉備「じゃあ、その夢を終わらすために力を貸してくれ。」
劉備の人なつっこい笑顔を魏延は直視できずに、小さな声ではい、とだけ言った。
最初のコメントを投稿しよう!